巨大マルゲリータに挑戦
実は私、あんまりピザ(イタリア風に発音するとピッツァですか)が、好きじゃない。日本でも年に二、三度食べるかどうかって感じ。むろんパスタは大好きで、自分で作ることもよくあるのだが……。
「それは偏向だ。それは、美味しいピッツァ、なかでもナポリ風のそれを食べたことがないからだ」と、旅友Sは言うのである。
というわけで、今回のナポリは、私のピッツァ観を根本的に覆し、後に平伏してそれを乞うようになるほどの、前代未聞の美味しいピッツァを発見しにきたといっても言いすぎではない。
とりあえず、Sのオススメに従って、世界的にも有名らしいナポリのピッツェリアの両巨頭 ブランディ Brandi とダ・ミケーレDa Michele の両店には出かけた。「マルゲリータ」の発祥はブランディだということだが、ダ・ミケーレの店内にも「うちのほうが古い」みたいな能書きが書いてある。
写真はダ・ミケーレの巨大マルゲリータ。若い人ならイケるとは思うけど、中年の日本人の小さな胃袋にはキツすぎる。でも、1枚を半分コじゃ、ちょっと情けない感じがして、2人分頼むことにした。
まあ、私もほぼ完食はした。ただ、円周部分のやや堅いところは残してしまった。「そこが美味いのだ」とまたピッツァ好きの人は言うのだが、子どものころから、私はパンの「耳」が嫌いなのだ。
ナポリ・ピッツァ。美味しかった。モチモチ感がある。意外とさっぱりとしたお味。ブランディよりはダ・ミケーレのほうが「ややウマ」。
ただ、私がこれからも好んでピッツァを注文するようになるかというと、ちょっと…。ピッツアは所詮、パンにすぎない。私はご飯と麺類のほうが好きなんです(笑)。
ダ・ミケーレは昼も夜もピーク時には人が並ぶというので、午前中、10時半ぐらいに行ったら、私たちがクチアケの客。店内では若いピッツァ職人が自分の賄い用のを釜で焼いて、テーブルで食べているところ。ときどき、年長の職人さんに何事か話しかけながら。なんかノンビリした光景だったなあ。
他にナポリでやったこと
ナポリのレストランいくつか
ナポリでは他に何をやっていたのか。まあ、ひたすら食って、歩いていたわけだが……旅の日記をもとに思い出してみよう。
ナポリに限らず、レストラン選びとメニューの選択は、「給食班」の S に頼り切りだった。その情報源はガイドブックやWebサイトだが、イタリア旅行情報サイト「JAPAN-ITALY Travel On-line」も大いに参考になったものの一つ。ここではイタリア各地に在住している日本人ガイドが、自分の足と舌でたしかめたレストランを案内している。ナポリでは案内人の祝美也子さんのオススメに従ってみることにした。やはり現地で食べ慣れた日本人の薦めるものには外れが少ない、というのがこれまでの旅の教訓である。
S は食事メニューに出てくる「日伊単語対照表」やレストランマップを独自に作成してきたりしてきて、これにもずいぶん助けられたものだ。私もイタリア語の辞書を組み込んだ電子辞書を持ってきたりしたが、メニューを全部辞書で引いていたらなかなか飯が食えないので、あんまり役に立たなかった。
ナポリ到着の4月24日(金)の夕食は、高級ホテルが建ち並ぶ海岸沿いのサンタルチア地区。その名もサンタルチア通りにある、佇まいは大衆的なレストラン「Ristorante Pizzeria Marino(リストランテ・ピッツェリア マリーノ)」である(詳しくは、こちら)。
- 白ワイン……ナポリ産、フルボトル
- 前菜……ムール貝のソテー
- メイン……トマトのパスタ
- セコンド……しらすと小イカのフリット
- ナチュラーレ(ガス抜きのミネラルウォーター)
しめて、
€
55。
ムール貝はこの後にも盛んに食べることになるのだが、きわめて美味。ハマる。他の料理もたしかに家庭料理的な感じがした。
念のため、これが二人で摂った食事のすべて。ほとんどをシェアするという感じ。テーブルには必ずパンが添えられているから、これでもけっこうおなか一杯なのだ。
翌4月25日(土)の夕食は、同じくサンタルチア地区、卵城近くの
Zi Teresa
というレストラン。日本のガイドブックにも載っている中級レストランだ。そのときのメニューは、
- 白ワイン……どこ産だか忘れた。フルボトル
- 前菜……シーフードサラダ、生ハムとモッツアレラチーズ
- メイン……スパゲッティ・ボンゴレ
- ナチュラーレ
まあ一般的な選択かな。味もそこそこ。しめて
€
58。
前菜が2つなのに、なんでメインが1つと思う人もいるだろうが、これもこちらの胃袋容量と向こうの料理容積の関係から。まあそれでも日本円換算で一人4,000円ぐらいの夕食にはなる。
日本でも都市部のイタリアンで、フルボトルのワインを頼んだらこれぐらいにはなるだろうけど、イタリアもけっして安くはない。店によってはコペルト(テーブルチャージ)やサービス料を含んでいる場合もある。
アルデンテに関する一考察
メニューだけ見ると「日本のイタ飯屋でもふつうに食べられるものばっかりだね」という人がいるかもしれない。ま、実際そうなんだけれど、同じスパゲッティ・ボンゴレでもやっぱり地元のものは美味しいんだよね。パスタのゆで汁とオリーブオイルの「乳化作用」という基本的なところはもちろんしっかり押さえてある。
よくパスタでは「アルデンテ」というが、一口目は「ちょっと芯が残ってるよ」というぐらいのゆで加減が、途中にはしっかり馴染んでくる。この食事の時間の推移とともに状態変化する素材の特質を、しっかり織り込み済みのところが、うまいイタリア料理の特徴なのかもしれない、と思う。
「アルデンテが理解できる民族は、イタリア人と日本人だけ」という言葉があるという。もしかしたらそうかもしれない。かつてロンドンのレストランで、ドロドロに茹でられ、すっかりコシを失った「パスタのようなもの」を食わされたとき、テーブルをひっくり返したくなったことを思い出した。
それはともあれ、 Zi Teresa は卵城に向かう突堤の際にあって、半分はヨットハーバーに面したオープン席になっている。ハーバーの夕景と一緒に食事を楽しめるはずなのだが、なぜか建物の開口部にビニールのカーテンを全面的にかけていて、見晴らしがよくない。聞けば「季節がまだ涼しいから」と。
ところが、食事の後の卵城散策でわかったことだが、卵城の突堤の先にはオープンカフェ風のレストランがいくつもあって、Zi Teresa なんかよりはるかに賑わいを見せている。こちらは下手なカーテンなんてかけてない。比較的若い人が多かったが、こっちの方が断然楽しそうだった、というのは後の祭り。
これらの「卵城突堤エリア」のレストランは、「地球の歩き方」や昭文社の「新個人旅行」シリーズのガイドブックには記載がなかったので、比較的新しいか、季節限定のものかもしれない。これからナポリに行く人は要チェックだ。
ナポリの下町食堂のお味は?
4月28日はナポリ・チェックアウトの日だったが、夜のパレルモ行きフェリーまでは時間があったので、荷物をフロントに預けて、トレド通り周辺を散策。ランチは Pignasecca(ピニアセッカ)という小さな通りにある「Ristorante Pizzeria Da Attilio(リストランテ・ピッツェリア ダ・アッティリオ) 」という店にした。これも祝さんのオススメの一つだ。詳しくはこちらを参照。
まさにナポリの下町食堂という感じ。午前中はピッツァだけの営業で12:30以降は、パスタなど他のランチメニューも提供する。
いただいたのは、ラグーソース(ミートソース)とキノコのオイルスパゲッティに赤ワイン(フルボトル)。ワインはお勧めに従ったが、微発泡ながら味が濃く美味。店の若い女将さんがやたら愛想がいい。「ワインのボトルを飲みきれなかったら、容器に入れてあげるからテイクアウトもOKよ」などという。ただ、料理はともかく、アルコールについては、私たちは簡単に飲み干しちゃうほうなんで……。
ここはパスタなど単品メニューが
€
5〜6からある。サンタルチア通りあたりよりかなりお安い。私たちのランチもしめて
€
20ちょっと。地元の人にも人気があるようで、ランチタイムには人が一杯だった。
丘の上の美術館
むろん食べてばかりだったわけではない。ふつうの観光客らしく美術館にも足を延ばした。28日の午後は
ナポリ国立考古学博物館
を見ようと思ったのだが、博物館の門前で「しまった!」。うかつなことに火曜日は休館だったのだ。今回はポンペイには立ち寄らない予定だったので、せめてこの博物館に常設展示されているという、遺跡からの発掘品を見たかったのだが……。いかに街歩きメインの旅とはいえ、主要ミュージアムの日程ぐらいは組み込んでおかないといけませんな。
気を取り直して、主要美術館のもう一つ
カポディモンテ美術館
へ方向転換。考古学博物館前から出る市内バスに乗ったのだけれど、「このあたりが入口だよ」と乗客に教えられたバス停で降りても、なかなかその場所が見つからない。何度も人に道を尋ね、右往左往して疲れる。結局のところ、丘の上に広大な庭園があって、そこに入るのは二つの門があって、それぞれの地点がけっこう離れているのだった。
美術館はあまりにも広く、随所にいろんな名画があるようだが、しっかりと見学計画を立てないと、とうてい見きれない。全体には古い宗教画が多い。その途中に、ときおりコンテンポラリーなパロディ芸術のようなものがおかれてあったりして、その意図がよくわからないところがあった。むしろ美術館の一角で企画展として開かれていたモノクロの写真展がよかった。戦後のイタリアを中心に、キューバやパリなども撮っていて、庶民生活の匂いが伝わるものだった(作家の名前、忘れちゃったんだよな)。
古い美術が好きな人にはなんの情報にもなってなくて、ごめんなさいです。